神棚の選び方 ―購入前に知っておきたいこと―
神道は日本の風土から生まれた土着の宗教であり、私たちの先祖が古来より伝えてきた「日本人のこころ」の根幹をなすものです。
神道を信仰している自覚がなくても、初詣でやお宮参り、合格祈願など、さまざまなお願い事を胸に神社を訪れる方は多いことでしょう。
神棚は、神様が来ていただけるようにご自宅にしつらえる『小さな神社』です。
神棚にお参りすることは神社にお参りするのと同じであり、日々神棚にお参りすることで心の安らぎや困難に立ち向かう力をいただけるようになります。
ここでは、神棚の購入をお考えの方に向けて
- 神棚にお祀りする神様は?
- 神棚はいつ購入するのがいいの?
- 神棚はどんな種類があるの?材質は?
- 神棚はどこに取り付けるのがいい?
- 毎日どんなお参りをするの?
といった疑問について解説致します。
神様がいらっしゃる場所ですから、形式や作法がないわけではありません。
しかし、一番大事なことは神様を思い、神様に感謝する「こころ」です。
あまり難しく考えず、神様をお迎えしたいと思い立ったお気持ちを大事に神棚をお選びください。
1.神棚にお祀りされる神様
そもそもの神道の信仰対象は森羅万象(しんらばんしょう)に宿る八百万(やおよろず)の神様で、それはつまり日本の風土、自然そのものと言い換えてもいいかもしれません。
それらの神様の中で最高神とされているのが、天照大神(あまてらすおおみかみ)です。ですから、神棚の中にも、天照大神が祀られている伊勢神宮(天照皇大神宮)のお神札(ふだ)(神宮大麻)がまず入ります。
また、神道は先に述べたとおり多神教で多くの神様を崇拝しています。そのため、神棚には伊勢神宮のお神札の他に先祖代々から住んでいる地域を守って下さっている氏神様や、住んでいる土地に関係なく敬っている神様=崇敬神社のお神札も入れることができます。
いくつも神様をお祀りしても神様同士が喧嘩をされたり、神様に失礼にあたるということはありません。それぞれの神様が私たちを守り、力を与えて下さるのです。
さらに、台所の神様である荒神様、七福神でお馴染みの大黒様や恵比寿様などをお祀りすることもあります。
2.神棚を購入する時期
「思い立ったら吉日」という言葉があるように、神棚を購入するタイミングも「こうでなければならない」という決まりはありません。
ただ、一般的には人生の節目となる大きな出来事や大変良いことがあった折などに購入されることが多いようです。
- 結婚や、子供が生まれた時
- 新しく会社を興した時や、事業を引き継いだ時
- 神様に感謝したいような良いことがあった時
- 神様に助けていただきたいような悪い出来事があった時
- 引越や新築の時
特に新築や引っ越しの場合は、家具などを入れて人が住まう前に神棚をしつらえ、まず神様にお入りいただくというのが最上の作法とされています。
「せっかく神様をお迎えするのだから、良い日を選んで失礼のないようにしたい」とお考えなら、仏壇通りの神棚販売店にご相談下さい。お話を伺った上で、良いお日取りで神棚をお納め致します。
3.神棚の種類
神棚は『小さな神社』と書いた通り、神社を模した『宮型(お宮とも呼ぶ)』と、宮型を置くための棚板で構成されています。
宮型の中には神社からいただいたお神札を収めます。
お神札は神様の分身そのものとも言うべきものですので、神棚は「神様をお祀りするのに失礼がないかどうか」という観点から選ぶことが重要です。
宮型の形はお祀りする神様の数や種類、神棚を祀るスペースによって形や大きさが変わってきますが、二つの型が一般的です。
- 一社宮(いっしゃみや)
- 一枚扉で、お神札は1枚、もしくは位の高い順に何枚かのお神札を重ねて入れる。比較的小さくコンパクト。
- 三社宮(さんしゃみや)
- 三枚扉で、中央に天照大神、向かって右に氏神様、向かって左にその他特に崇敬する神様をお祀りできる本格的な宮型。幅が50cm以上など、かなり大きなサイズのものが多い。
一社宮
三社宮
神棚を新しく購入される際にはさらに、
- お神札が収められる十分な大きさがあるか
- 新しいお神札にお取り替えする際に、出し入れが容易にできるか
という点にも注意して選ばれると良いでしょう。
「より良いお宮に神様をお迎えしたい」というお気持ちから、意匠に凝った壮麗な宮型をお求めになる方もいらっしゃいます。
ただ無意味に豪奢にしているものではなく、最高位の神社である伊勢神宮により近づけているものなど、是非正しい由来のものをお求めください。
また、宮型が高価だからよりご利益がある、ということはありません。神様を敬い、感謝する気持ちを込めて、ご自身のできる範囲で神棚を選べば良いのです。
4.神棚の材質
神棚は、八百万の神がいらっしゃる自然、私たちを育んでくれる自然に感謝する気持ちをお伝えする場です。ですから、神棚も「自然のまま」に加工をしていない白木で作ります。
特に、「霊(ヒ)の木」と呼ばれたことが名前の由来と言われる国産のヒノキは、神棚に最適とされています。伊勢神宮の柱にも使われている木曽のヒノキを使った神棚をご用意できればなお良いでしょう。
仏壇通りの神棚販売店では、木曽のヒノキを用いた最上品の神棚も数多く取り扱っています。
店内の清々しいヒノキの香りを嗅ぎ、その清浄な木肌を実際にご覧いただければ、神棚は神殿であると実感いただけることと思います。
5.神具について
神具とは毎日のお参りやお供えに使う道具のことです。
神棚が自然のままの白木を用いて作られているのと同様に、お供えも自然そのものの形で用います。
お供えに用いる神具も大変シンプルなものです。以下に一般的に使用されている神具をご紹介します。
- ①皿(かわらけ)
- 海からの恵みである塩、大地からの恵みである命の根=稲からできたお米をお供えするためのお皿です。
塩と米それぞれに1枚ずつ準備します。 - ②水器(すいき)
- 命の源であるお水を入れる容器です。
- ③榊立(さかきたて)
- 常緑であり、『栄える木』と呼ばれたことが名前の由来である榊をお供えするための花瓶です。神棚の左右に置くために2本で一対となっています。
- ④瓶子(へいじ)
- 米から醸される日本酒=御神酒(おみき)をお供えするための容器です。瓶子も左右一対で準備します。
- ⑤蝋燭立(ろうそくたて)
- 神棚にお参りする際、邪気を祓うためにろうそくを点けます。昨今では火災などの懸念から電池式のロウソクを用いる場合もあるようですが、電球では魔を祓うことはできませんので、ロウソクを灯す意味と安全面を考慮してご検討下さい。
- ⑥神鏡(しんきょう)
- 宮型の前に置く鏡です。鏡自体に神様が宿るのではなく、お参りする人が己の中の信仰心に向き合うためであるとも、天照大神が司る太陽を模したものだとも言われています。
6.まとめ
いかがでしたでしょうか。
神棚を初めて購入されるにあたって知っておきたい神棚の種類や材質、神棚とあわせてご用意いただきたい神具について簡単にご紹介致しました。
もっと詳しくお知りになりたい方は是非、仏壇通りの神棚販売店にお越し下さい。
実際の神棚をご覧になり、お気持ちに添うものを見つけていただきたいと思います。
店長:前田 裕平
・神職正階階位證(國學院大學)